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医院だより

第43回『かゆくても掻いてはダメな理由』

こんにちは、理事長の工藤です。

前号は「陰部の赤みがじつは皮膚ガン!?」というお話をしました。

今回は「かゆくても掻いてはダメな理由」についてお話しします。

 

皮膚科の先生に「かゆくても掻いちゃだめ!」って言われるんですがどうしてですか?

 あなたも皮膚科のお医者さんに、「かゆいときでも掻いちゃだめだよ!」と言われた経験はありませんか?「そんなこと言われたってかゆくて我慢できません!」なんて、ちょっぴりムッとした方もいるかも知れません。もし、あなたがそんな経験がないにしても、あんまりかゆいところを掻きすぎて痛くなってしまったり、もっとひどいときは、掻きすぎて血が出てしまったりしたことはありませんか?私も実際、とてもかゆいときは、ついポリポリ掻いてしまいます…。ですから絶対掻いちゃダメ!という訳ではもちろんありません。でも、少しでも、できるだけ掻かないように注意することが大事だと言われています。 

 

■かゆくても(できるだけ)掻かない方がよい2つの理由 

現在、大きく分けて2つの理由から、「かゆくても、(できるだけ)掻いてはいけない」と言われています。 ・理由1 皮膚のバリア機能がますます壊されてしまうそもそも皮膚は、あなたの体を守ってくれる強いバリアの役目を持っています。皮膚がなかったら、バイ菌やゴミ、ホコリなどが全部からだの中に入ってきてしまいますよね。皮膚は常にあなたを包み込んで守ってくれているわけですね。この強力なバリアである皮膚ですが、あまりに強くひっかくと、もちろん壊れてしまいます。掻きすぎて痛くなったり、血が出てしまうのはこのためです。血が出る、ということは、かなり深い部分まで皮膚を壊してしまったことの証拠なんですね。そうすると、もともと湿疹やアトピーで、ただでさえ弱くなっていたバリア機能がさらに壊され、外からの刺激に弱くなってしまいます。具体的には、細菌に感染しやすくなったりします。 ・理由2 掻いた部分からますますかゆみ物質が放出される皮膚をひっかくと、その壊された細胞や神経などから、ますますかゆみを悪化させる物質が放出されることがわかっています。そのため、掻いたことにより、炎症がますますひどくなり、かゆみが余計に悪化してしまうのです。「かけばかくほど、ますます”かゆみ物質”が出てくる」なんてちょっとびっくりですよね!これらの理由を知っていると、次の「イッチ・スクラッチサイクル」のことがよりよく理解できるようになります。 

 

■恐怖の「イッチ・スクラッチサイクル(かゆみサイクル)」とは?

 これまでお話しした2つの理由から、かゆみを感じてひっかけばひっかくほど、ますますかゆみが増し、さらにひっかいてしまい、ますますかゆくなる、という悪循環におちいります。つまり、 かゆい ↓ひっかく ↓皮膚のバリア機能壊れる・かゆみ物質の放出 ↓さらにかゆくなる! ↓ますますひっかく! ↓ますます皮膚のバリア機能壊れる・かゆみ物質の放出! というサイクルにおちいってしまいます。これを「イッチ・スクラッチサイクル」と呼びます。「イッチ」とは「かゆみ」という意味です。「スクラッチ」とは「ひっかく」という意味です。このサイクルにおちいらないためにも皮膚科の先生は「掻いちゃだめ!」なんて言うわけです。