大事な約束を忘れてしまったり、人の名前が思い出せなかったり・・・。こんな出来事が続くと、年齢のせいかもしれない、とあきらめがちです。ところが、「覚える力」は年をとってもそれほど衰えない、ということが分かってきました。記憶力には、「覚える力」と「思い出す力」の2つがあり、加齢とともに低下していくのは「思い出す力」だそうです。ですから、「思い出す力」を高めることが、記憶力アップにつながります。
思い出す力の強化には、記憶したいことを「場所」と結びつけて覚える「場所法」が有効です。古代ローマ時代からあった場所法は、場所とイメージを結びつけます。脳の海馬には、場所の記憶に特化した「場所細胞」があり、自分が行った場所を次々と覚えていきます。これは、生物がエサを探したり、巣に帰るために高度に発達させてきた能力です。具体的な場所法の例ですが、覚えたい物を玄関から部屋に入る間にあるものなど、よく知っている場所と結び付けて覚えます。
例えば、とんかち、ねぎ、スマホ、自転車という単語を覚えるときは、玄関の土間にとんかちが刺さって、靴箱にねぎが生え、トイレにスマホを落とし、洗面所で自転車を洗った、といった具合です。突飛であるほど強烈に記憶に残るため、イメージを膨らませるのが場所法のコツです。 場所を思い出すと、自然と覚えたものも思い出すことができ、「場所細胞」を活性化させる脳トレ効果もあります。
「どうせ覚えられない」といった思い込みも厳禁です。ネガティブな感情があると、「覚える力」を発揮できなくなります。年をとっても「覚える力」は衰えないので、自信を持って覚えましょう。運動も記憶と大きな関係があります。有酸素運動は海馬を大きくし、脳全体の衰えを防ぐそうです。週3回の有酸素運動で、将来の認知症リスクが半分になるという研究報告もあります。